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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「十三夜の面影」29








あれからどう過ごしてきたのだろう。

朝起きて仕事に行っても、

心ここにあらずで、仕事だけ無感情にこなしてる。

まだすることがあってよかったと言う感じだ。

うちに帰ってからの長い夜。

もの思いにふけると、かぐや姫の姿が見えてくるようだ。

だから何も考えたくない。何も見たくない。

ただ、時間だけがぼんやりと過ぎていく。

涙も出ないほど、心が死んでいる。

こんなんじゃいけないと自分を奮い立たせるのだが、

なかなか力が出てこないのだ。

彼女と逢う前は何をしていたのだろう。

何を考えていたのか分からないほどだ。

彼女が置いていった服や香水「ナイルの庭」を、

処分しきれずにまだこの部屋に置いてある。

さすがにダンボールに詰め込んで、

見えないようにはしてあるのだが。

なぜか香りだけはするのだ。

詰め込んだ時にこぼれてしまったのか。

ドアを開けると「お帰りなさい」の声が聞こえたような錯覚。

この香りのせいなのか。

目を瞑るとその香りだけまとった

彼女のしなやかな肢体が目に浮かんでくる。

振り払おうとしても、頭から離れないのだ。

それならいっそ、その肢体を抱いてしまおうか。

夢の中で。

もう現実と夢幻の区別がつかなくなっているのか。

カーテンからこぼれ射る月光に浮かぶ彼女が見える。

僕もとうとう幻覚を見るようになったのか。

怖くなって、ふと我に帰る。

そういえば今日は何日だろう。

カレンダーさえも見ていない。

慌ててカレンダーを見ると、

10月15日に丸がつけられ、

「十三夜」と書いてあった。

携帯を見ると今日は14日。もう明日だ。

いつの間に一ヶ月近く経ってしまったのか。

彼女が「十五夜だけでは片見月になるから、

十三夜もお月見してね。」と言ってたのを思い出す。

そのために彼女が書いておいたのだろう。

「同じ場所でなければ。」とも言ってたな。

なぜあんなに十三夜の月見にこだわっていたのかな。

わけは分からないが、

またあの山を登らなければいけないのか。

それもたった一人で。

でも、そこから月を眺めれば、

少しでも彼女の近くに行ける気がする。

明日は行ってみよう。

そうすれば、こんな状態から抜け出せるような気がする。

気休めかもしれないが。

続き























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